開発担当者に聞いた!開発エピソード(クッション機能付スピコン)

工場の生産性を向上させたい。できるだけ簡単な方法で。

クッション機能付スピードコントローラー開発担当者 主任北澤達也さん 
まず、クッション機能付スピコン(以下BJSU)の特長を教えてください。

ショックアブソーバの機能を付加したスピードコントローラです。
シリンダ速度を二段階調整することでストロークエンド付近での速度を減速し、衝撃緩和することができます。ショックアブソーバの取付けが難しいシリンダや、メンテナンスが多い場所に最適で、サイクルタイムを上げることも可能です。
商品名も、クッション付シリンダのクッション機構をイメージしてもらえるように付けられています。クッション付シリンダの様に衝撃緩和の働きができるという意味合いです。
PISCO風にはわかりやすく、エアクッション内蔵ともPRしていますね。

商品を思いついたきっかけは?

急激な生産増により製造チームへ応援に行く機会があり、そこで毎日、自動組立機にプラスチックの供給を行っていました。
ですが、機械のタクト…つまりサイクルタイムが遅いからすぐに手が空いてしまったんです。もっと早く機械が回ればいいのにと思って機械を見ていたら、シリンダ速度が遅かったんです。そこで単純に、シリンダ速度を上げればいいのにと思いましたが、そうするとストロークエンドで衝撃が発生してしまう。それにシリンダ速度が速ければ速いほどアブソーバの消耗も早くなってしまうから、速度を速くできないとわかりました。
それなら、途中までは速い速度のままで、ストロークエンド付近で減速できれば、サイクルタイムが上がるはず、と考えました。電動シリンダのような精度が求められる場所ばかりではないし、今ある設備で、できる限り生産性を上げられないかと…それで思いついたのがBJSUです。

構造図、空気圧記号

…当初は、商品化されるとは思っていなかった…。

実は、商品化されると思っていませんでした。
当初、BJSUの構想を上長に話した時、「スピコンと同じ位の値段で出せればね」 なんて言われていました。そりゃ無理でしょ!って(笑)。
構造を見ていただければわかりますが、BJSUはチャンバ、スピコン、バルブ、 急速排気弁といういくつもの機能があり、部品点数が他の商品に比べてすごく多いんです。部品点数として約40点。製造も出荷検査も大変だろうと予想していました。…ですので、作ることは可能でも、量産されるイメージは最初はわかなかったのが本音です。

それでは、どのように商品化されたのですか?

一度は却下されましたが、アイデアは面白いと言われていました。
自分が経験したように、サイクルタイムや、ショックアブソーバの消耗に悩みがある現場は少なくないだろうという確信がありました。だから、考えた回路を実際に組んでデータ取りをし、再提案したんです。懸念点もクリアにし、これならいけると改めて社内で話をして、商品化の流れにこぎつけました。同時に特許出願していたので、2014年6月には特許登録されました。
…構想から商品化まで約2年半程でしたが、量産後は工程設計がうまくいき、検査も組立ても試算より早くできています。これは一重に関係部署の皆のおかげだと思っています。

シリンダは案外、作業者の手の届きにくい場所にある

シリンダは案外、作業者の手の届きにくい場所にある
商品化する中で、一番苦労したところは?

…うーん、形状のコンパクト化に苦労しましたね。二ードルが3つというのが絶対条件でさらに部品点数も多いので、これを小さくまとめるのは大変でした。
最初はシリンダ直付け(エルボタイプ)ばかり考えてました。「スピコン=シリンダ直接付け」のイメージばかりが頭にあって…。
しかし、構想中に取引先の工場を視察した時、「シリンダは案外、作業者の手の届きにくい場所にあるんだな」と感じたことがあったんです。だから、直付けよりユニオンタイプの方が、取付けが楽で便利なケースも多いんじゃないかって気づいたんです。チューブを切ってつなげばいいだけですしね。それがヒントでしょうか。それからはユニオンタイプでデザインして、今の形に落ち着きました。

断念しそうになったことはありましたか?

断念しそうになったことはなかったです(笑)。でも、評価期間中に個別耐久試験が難航し、初出展するIFPEX2014に間に合わないかもしれないと焦った時期はありました。あとは、樹脂本体が単純な形状ではないので、金型を作る部署との連携が重要でした。事前に樹脂の流動解析を繰り返し、資料を作って打ち合わせました。 大変だったけど、これも各部署の協力あっての結果でした。

どういったユーザーに使ってもらいたいですか?

商品を思いついたきっかけでもありますが、自動組立機のワーク搬送などで、サイクルタイムを上げたい場合です。 ワークが重すぎるとシリンダにも負荷がかかり調整が不安定になる要因になりますので、小型ワークだと安定すると思います。
それから、アブソーバも消耗品ですから、アブソーバの寿命を伸ばすという目的で併用もありだと思います。

最後に、調整についてはどうでしょうか?

最初は取扱説明書に倣っていただければと思います。シリンダ径、配管容積や圧力など周囲環境に左右されやすいので、あらかじめ条件を決めてから調整を行うと安定します。操作自体は、ニードルを3つ調整するだけですが…、普通のスピコンよりは難しいですよね。
特に、クッションの開始位置を決めるTIM二ードルは、ニードルを一度に回し過ぎずシリンダの動きを見ながら段階的に開閉してください。

編集者コメント

モノづくりのヒントって、身の周りにある小さな「疑問」の中にあるのですね。
シリンダ、ショックアブソーバは日常的に使われるもの。装置の設計上の問題で、メンテナンスや交換について多少不便な面があっても、いつしか「そのまま」になっていることって多いですよね。もう少し交換が楽なら、長持ちすれば、サイクルタイムが上がれば…など。BJSUは、そんな所に最適です。