ワンタッチ継手とは?基礎知識から「継手・チューブの選び方」「正しい配管方法」まで解説
~継手・チューブを安全かつ効率的に利用するために~
はじめに
製造現場やFA(ファクトリーオートメーション)設備、食品業界など、幅広い分野で利用されている空気圧機器。コンプレッサから供給される圧縮空気を動力として動作する機器で、経済性・安全性・環境性に優れています。
そして、空気圧機器の動作に欠かせないのが、補器類と呼ばれるワンタッチ継手などの空圧継手とエアチューブ(エアホース)です。
しかし、正しい知識を持たずに接続を行うと、エア漏れや性能低下、さらには事故につながる可能性もあります。
本コラムでは、
ワンタッチ継手の仕組みとメリット
ワンタッチ継手の主な種類と用途
ワンタッチ継手をはじめとする継手、チューブの正しい選定方法
配管時に気をつけるポイント(エア漏れなどのトラブルを防ぐコツ)
実際によく起こるトラブルと、その対策
を、当社のワンタッチ継手とエアチューブを例に挙げ、初心者の方にもわかりやすく解説します。
1.ワンタッチ継手とは?仕組みとメリット
2.ワンタッチ継手の主な種類と用途(環境別の選び方)
3.ワンタッチ継手・チューブを正しく選定するための基本
4.ワンタッチ継手の正しい使い方・チューブの接続方法
5.ワンタッチ継手のよくあるトラブル(エア印加時・破損)と対策
1.ワンタッチ継手とは?仕組みとメリット
ワンタッチ継手(プッシュイン継手)とは、工具を一切使用せず、継手の挿込口にチューブを「挿すだけ」で配管の接続が完了する空気圧用の継手です。
チューブ着脱の簡単さと確実な接続から、工場設備やFA(ファクトリーオートメーション)機器、食品製造ラインなど、あらゆる空気圧配管において現在最も主流となっています。
1-1 ワンタッチ継手の内部構造と仕組み
ワンタッチ継手は一見シンプルな外観ですが、内部にはエア漏れやチューブの抜けを防ぐための精密な部品が組み込まれています。主に以下の2つの役割を持つ部品で構成されています。
ロック爪(チューブの固定)
ワンタッチ継手では、ロック爪と呼ばれる金属部品がチューブヘ軽く食い込み、固定する仕組みになっています。
圧力がかかるほどロック爪の保持力が増すため、チューブが簡単に抜けない安全な構造です。
エア漏れを防ぐ弾性体スリーブ
ロック爪のさらに奥には、弾性体スリーブ(シール部) が配置されています。
これはゴムの弾性を利用してチューブ外周に密着し、気密性を確保する役割を持っています。
ゴム材質は用途によって適切な種類を選ぶ必要があります。
主な材質と特長は次の通りです。
|
NBR |
一般的な空気圧用途向け |
|---|---|
|
HNBR |
オゾンなどへの耐性が必要な用途向け |
|
EPDM |
水・薬品などを使用する環境向け |
|
FKM |
高温環境・薬品に強い用途向け |
1-2 ワンタッチ継手を導入する3つのメリット
ワンタッチ継手を配管システムに採用することで、現場に以下のようなメリットをもたらします。
1.配管作業のスピードアップ(作業効率化)
締付け式の継手やホースバンドを使用する接続とは異なり、チューブを「挿すだけ」、外す時は開放リングを「押しながら抜くだけ」です。配管にかかる工数と時間を大幅に削減できます。
2.施工品質の均一化(ヒューマンエラーの防止)
工具を使った締付け加減(トルク)に依存しないため、作業者の熟練度に関わらず、誰でも確実で均一な接続が可能です。これにより、締付け不足によるエア漏れや、締めすぎによる破損を防ぎます。
3.省スペース・コンパクトな配管
工具を入れるスペースを確保する必要がないため、機器が密集した狭いスペースや、複雑な装置内部の配管にも適しています。
2.ワンタッチ継手の主な種類と用途(環境別の選び方)
ワンタッチ継手は、使用する流体(空気・水・薬品など)や、設置する環境(温度・クリーン度・スパッタの有無など)に合わせて適切な材質を選ぶ必要があります。
日本ピスコでは、あらゆる配管ニーズに応えるため多彩なワンタッチ継手をラインナップしています。
代表的な種類と最適な用途をご紹介します。
2-1 一般環境向け(標準・省スペース)
工場内の一般的なエア配管や、機器への空気供給などに最も多く使われるタイプです。
チューブフィッティング(標準タイプ)
豊富なバリエーション(形状・サイズ)を誇る、日本ピスコの最もスタンダードなワンタッチ継手です。空気だけでなく、条件により水の使用も可能です。
チューブフィッティングミニ
標準タイプに比べて容積比で40%の小型化を実現したコンパクトタイプ。省スペース化が求められる小型装置の内部や、配管が密集する箇所に最適です。
2-2 耐腐蝕・薬品・クリーン環境向け
食品・半導体製造ラインや、薬品の飛沫がかかる環境など、金属の腐蝕や不純物の発生を嫌う現場向けの継手です。
ステンレスタイプ
(SUS316/SUS304/SUS303相当)
金属部品に耐腐蝕性に優れたステンレスを使用し、シールゴムには耐薬品性の高いFKM(フッ素ゴム)などを採用したタイプです。用途やコストに合わせて材質のグレードを選択できます。
PP(ポリプロピレン)タイプ
本体に透明性が高いPP樹脂を採用したタイプです。クリーン環境での使用に最適です。
ケミカル継手
本体材質にPPS樹脂を採用した「オール樹脂製」のワンタッチ継手です。高い耐熱性と耐薬品性を持ちます。
2-3 その他の特殊環境向け(スパッタ・静電気対策・可動部)
過酷な現場環境や、特殊な動作を伴う機器に対応する継手です。
耐スパッタタイプ(難燃性樹脂 / ブラス)
溶接現場など、火花(スパッタ)が飛散する環境向けです。UL94 V-0相当の難燃性樹脂を使用したタイプや、本体部分に加え開放リングまで黄銅(真鍮)で構成された「ブラス」タイプがあり、火花による継手の溶けを防ぎます。
帯電防止タイプ
静電気散逸樹脂を使用したワンタッチ継手です。静電気の発生を嫌う電子部品の製造ラインや組立ラインの配管に最適です。
ロータリジョイント(回転部配管用)
ベアリングを内蔵しており、ロボットアームなどの揺動部や高速回転部での使用に特化したタイプです。機器が回転してもチューブがねじれたり絡まったりするのを防ぎます。
3.ワンタッチ継手・チューブを正しく選定するための基本
空気圧機器を安全・確実に稼働させるためには、用途に合った継手はもちろん、チューブの選定も不可欠です。
どれだけワンタッチ継手本体が優れていても、接続するチューブの材質や配管設計(流量)を間違えると、エア漏れや機器の動作不良につながってしまいます。
使用する流体の温度や圧力など使用条件に適した継手・チューブを選定するためには、以下の3つの要素を確認することが重要です。
使用温度範囲・使用圧力範囲
使用流体・使用環境
流量(有効断面積)
それぞれの注意ポイントについて、詳しく解説していきます。
3-1 使用温度範囲・使用圧力範囲
継手やチューブの性能は、構造 と 材質 によって決まります。
特に選定時に重要なポイントは次の2つです。
1. 流体や環境温度によって、最高使用圧力は変化する
2. 流体の種類(薬液など)や条件によって、破裂・破壊の可能性がある
例えば、当社のチューブフィッティングPPタイプでは、環境温度が上昇すると最高使用圧力が低下します(下図参照)。
20℃の通常環境と比較して、使用温度範囲の上限値80℃では使用できる圧力が約3分の1以下になることもあり、温度上昇によりチューブ抜けやシールからの漏れ等の要因となります。
一般的なエアチューブは、材料をマカロニ状に成形した単純な製品です。チューブに使用する材料は、環境や流体の温度などが直接性能に影響を与えるため注意が必要です。一例として当社「空気専用ポリウレタンチューブ」の使用温度と破壊圧力の関係性を下記の通り示します。
※)
左記データはチューブ外径φ1.8、2.0、3.0の破壊圧力曲線(参考値)。
使用温度が上昇するにつれ破裂圧力は低下します。
高温下でも使用できる材質はポリアミド系チューブやフッ素系チューブが有りますが、硬く曲げにくくなり一般的に取付け時の作業性が劣ります。
電磁弁の切換え頻度が高い場合は、断熱圧縮による発熱も考慮が必要となります。
3-2 使用流体・使用環境
継手・チューブに使用される材質によって、適した流体や環境は異なります。
継手には様々な部材を使用しており、流体の種類によっては、樹脂を侵したり金属部を腐蝕させたりする場合があり、誤った材質選定は早期破損の原因になります。
そのため、必ず以下を確認してください。
メーカーのカタログやWebサイトに記載された「使用流体への適合性」
Oリング、スリーブなど部材ごとの耐薬品性・耐蝕性
当社の「PPタイプ」継手(樹脂ネジタイプ)は構成部材にSUS304(金属)を使用していますが、Oリングや弾性体スリーブにより流体が金属部に直接触れない設計になっています。
このため、「樹脂は侵さないが金属腐蝕性の高い流体」を使用する用途に適した製品です。
※) 金属部品を使用しているチューブ挿込口のガイドリング・ロック爪は弾性体スリーブが、樹脂ネジ固定用圧入リングはOリングがシールしており基本的に流体が金属部に接液しません。
どんな環境にも耐えられる継手、チューブがあれば事足りるのですが、そのようにオールマイティーな製品は操作性が悪かったり、通常の使用では過剰なスペックで価格が高くなったりするため、適切な継手・チューブの材質を選定する必要があります。
3-3 流量(有効断面積)による選定
ワンタッチ継手やチューブのサイズ(外径)を選ぶ際、アクチュエータを正しく動作させるために必要な空気量を十分に供給できるかを確認する必要があります。
そのために重要となるのが 流量計算 です。
特に以下の点に注意してください。
チューブが長くなるほど流量は低下する
曲げが多いほど抵抗が増え、流量は低下する
判断基準は「オリフィス径」ではなく 有効断面積
流量計算をおこなう際に配管内の有効断面積を把握することが必要です。配管内の有効断面積を把握することでアクチュエータを駆動させる際に必要なエア流量を確認し、動作不良などの不具合を防ぐことが可能になります。
また設計段階で使用されるパラメータは、オリフィス径よりも有効断面積を把握することが必要になってきます。
4.ワンタッチ継手の正しい使い方・チューブの接続方法
継手・チューブを適切に選定した後は、正しい方法で接続することが重要です。
誤った取付けは、エア漏れ・チューブ抜け・機器の誤作動といったトラブルにつながるため、以下のポイントを押さえて作業を進めましょう。
4-1 エア漏れ・抜けを防ぐチューブの挿込み方
チューブをワンタッチ継手へ接続する際は、チューブエンド(奥当たり)まで確実に押込むことが最重要です。
奥まで入っていない場合、エア漏れ、チューブ抜け、加圧時にチューブが暴れ事故につながる可能性があります。
慣れていない場合は、メーカーが案内する「押込み長の目安」や チューブエンドマーカ (ピスコ専用品)を使用すると確実です。
4-2 ワンタッチ継手からのチューブの外し方(残圧に注意)
チューブを継手から外す際は、まず 配管内の空気を完全に抜く(残圧ゼロ) ことが必須です。
なぜ残圧確認が必要なのか
圧縮空気が残った状態でチューブを抜くと、強い勢いでチューブが飛出し、「暴れホース」になり重大事故につながる危険があります。
そのため、
1. 手動弁・電磁弁を閉じる
2. 圧力計などで残圧を確認
3. 必要に応じて排気弁で確実に圧力を抜く
という手順を必ず実施してください。
外し方の基本
ワンタッチ継手は 開放リング をまっすぐ押込むことで、ロック爪が開放されチューブを引抜くと、簡単に取外せます。
4-3 外部応力の低減
狭いスペースで無理な配管を行うと、継手やチューブにねじれ・引張り・過度な曲げ・振動などの外力が加わります。
これらは漏れや破損の原因になるため、余裕を持ったルート取りを心がけることが重要です。
初期配管時点で無理のない取回しにすることが、長期的なトラブル防止につながります。
4-4 ネジ接続のトルク管理
ワンタッチ継手を機器(シリンダや電磁弁など)のポートにねじ込んで固定する際は、適正トルクで締付けることが重要です。
トルクが弱い → エア漏れ
トルクが強すぎる → 破損・ネジ部の損傷
振動による緩み → 継手脱落の危険
メーカーのカタログに記載された「締付トルク値」を必ず守ってください。
5.ワンタッチ継手のよくあるトラブル(エア印加時・破損)と対策
継手やチューブに関するトラブルは、大きく 2つのパターン に分類されます。
それぞれの原因と対策を理解しておくことで、事故の予防につながります。
5-1 エア印加時に起こりやすいトラブル
エアを流し始めた際に多く発生するのが、次のようなトラブルです。
チューブの押込み不足
→奥まで確実に押込まれていない場合、加圧時にチューブが継手から外れ、勢いよく暴れる危険があります。
配管間違いによる誤動作
→誤ったポートに配管していると、シリンダやバルブが意図しない動きを起こすことがあります。
<対策>
エアを流す前に、配管が正しい位置に接続されているか、チューブが折れたり潰れたりしていないかを必ず確認し、徐々に加圧しながら動作を確認してください。
5-2 突発的に発生する破損トラブル
使用中に突然発生する破損には、次のような原因があります。
無理な外力により継手・チューブが破損する
→曲げ・引張り・ねじれといった外力が継続的に加わると、部品が破損する恐れがあります。
ネジ締付けの不適切さによる緩み・脱落
→トルクが足りないと振動で緩み、継手が脱落する危険があります。
環境変化による経年劣化
→紫外線、湿気、温度変化などにより樹脂が劣化すると、亀裂や破損の原因になります。(加水分解など)
<対策>
使用環境・流体・耐圧性能に適した継手・チューブを選定するとともに、定期的な点検・交換 を行い、異常の早期発見に努めてください。
おわりに
継手やチューブは一見シンプルな部品ですが、空気圧機器の性能と安全性を支える非常に重要な要素です。
実は本コラム筆者も営業先で残圧の確認を怠り、空気圧で満たされたチューブを抜き、圧縮空気が爆音とともに噴出し、チューブを暴れさせ冷や汗をかいたこともあります。
また作業前にメイン配管の手動弁や電磁弁を閉めただけでは配管内部に圧力が残り(残圧)、機器などの誤動作をおこし、装置の破損や場合によっては機器に手を挟むなどの人身事故を起こす可能性があります。
したがって圧力計などで残圧の有無を確認し、残圧があるときは排気弁や適切な方法で確実に残圧を排気してから作業を行ってください。
これらの手順を徹底することで、事故発生のリスクを大幅に低減させることが可能です。
正しい知識をもって製品を選定し、適切な方法で配管することで、設備の安定稼働や長寿命化につながります。
空気圧機器について「確実につなぐ技術」を身につけることは、工場や設備の生産性を高めるうえでも欠かせない取り組みです。
ぜひ、本コラムの内容を日々の作業にお役立てください。
※) 本コラムでご紹介した商品